事件の経緯
令和4年1月、
製薬会社「第一三共」研究社員の吉田佳右(40)は
殺人の容疑で逮捕された。
令和4年 1月14日~16日の間に、
自宅室内で妻の容子さん(当時40歳)に
メタノールを摂取させ殺害した疑いがあり、
本人は
「事実ではない。妻に殺意を抱いたことはなく、自宅にメタノールを持ち込んだこともない」
と否認した。
自ら119番し、救急隊に
「朝起きたら妻の意識がなかった」
と説明している。
警視庁は体調悪化を装った殺害とみて調査している。
遺体には特に外傷は見られず病死との判断であったが、
解剖結果で血液や尿からメタノールが検出され、
3月に急性メタノール中毒が死因と判明。
救急隊が駆けつけた際には、
妻は自室のベッド脇で倒れ、搬送先の病院で死亡した。
吉田容疑者によると
「前日朝に嘔吐していたので、二日酔いだと思い、寝かせておいた」
と供述していた。
妻が自らメタノールを飲む理由は見当たらなかったとのこと。
Twitterの反応
やはり今後のメタノールの管理規制の厳重化が危惧されていますね。
そしてやはり心配なのは残された子供です。
殺人事件の半数は家庭内とも言われておりますが
子供に罪はないのでどうか
残された子供が優しい家庭に引き取ってもらい
将来、精神的に負担を与えないように
周りの協力を徹底してほしいものです。
メタノールの特徴と毒性
- メタノールはメチルアルコールとも呼ばれるアルコールの一種無色透明の液体
- 塗料や工業用の溶剤などに用いられる
- 有害性は高い
- 比重0.79
- 水によく溶ける
- 体内に入れば少量でも失明の可能性がある
- 摂取量が多いと不整脈や意識障害、心停止に至ることもある
- 経口摂取した場合の致死量は30~240ml(個人差もあり0.3〜1.0 mg/kgとの見解もある)
- 引火性が強く危険物第四類アルコール類に指定
- 実は一部の果実やフルーツジュースにも含有している
含有率100%のメタノールは毒劇物取締法による規制されており、
国・都道府県等に登録して初めて製造、販売が可能です。
購入者にもしっかりと
本人確認・用途を聞いて販売しています。
ただし吉田容疑者は研究者員のため
メタノールを入手することができる立場であるが
家宅捜索においてメタノールは見つかっていない模様。
他にも
- ロシアで密造酒として売られていたメタノール度数93%の液体を飲用し16人が死亡。
- 兵庫県では2016年にメタノール入りの酒を旦那に飲ませ、多臓器不全で死亡させた事件
といった事件も起こっています。
毒性の作用機序
メタノールは人体内で
メタノール→ホルムアルデヒド→蟻酸
と代謝されます
ひどい場合は視神経障害による
失明や死亡に至るケースもあります。
その他
めまい、頭痛、腹痛、吐き気、背中の痛みなどの原因となります。
国試で(目散る)アルコールと覚えたような
メタノール中毒の対処法4選
実はこれ薬剤師の国家試験でも出てました
第97回一般理論問題問135
メタノール中毒患者に対する治療方法として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1エタノール投与
2 活性炭投与
3 炭酸水素ナトリウム投与
4 葉酸投与
5 血液透析
答えは2番で
それ以外はれっきとした中毒患者の治療です。
エタノール投与
エタノールは、アルコール脱水素酵素との親和性がメタノールより高いため、
メタノールの代謝を抑制するため用いられます。
メタノールの毒性は主に
メタノールの代謝から生じるギ酸によるものです。
炭酸水素ナトリウム投与
炭酸水素ナトリウムNaHCO3は、
メタノール中毒による代謝性アシドーシス対策で用いる
葉酸の投与
葉酸は実は体内でギ酸を二酸化炭素に変化させる反応を示す
そのためメタノール中毒に有効
透析
透析は血中の毒物を取り除いてくれます
まとめ
メタノールは、
生体でアルコール脱水素酵素によってホルムアルデヒドとなる。
その後ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼによりギ酸となります。
メタノールの毒性は主にメタノールの代謝から生じるギ酸によるものです。
メタノールはお酒などのアルコール(エタノール)と一緒に
血液内に吸収され、
エタノールと比較してメタノールは
肝臓での処理に時間がかかります。
そのため誤飲した場合落ち着いて
即座に病院に行くようにした方が良いかと思います。